田坂広志 著「死は存在しない」を読んで
先日、光文社新書「死は存在しない」(田坂広志 著)を読みました。
宗教や哲学の本かと思うタイトルですが、サブタイトルに「最先端量子科学が示す新たな仮説」とあります。
新聞広告の「なぜ、『最先端の科学の知見』と『最古の宗教の直観』が一致するのか。」というキャッチフレーズにビビッときて、「ぜひ読みたい!」と思いました。
不思議体験は本当に「ただの気のせい」なのか?
私は子供の頃から、いわゆる「スピリチュアル系」の話に興味がありました。
臨死体験など死後の世界や占い、予言・予知、生まれ変わりやシンクロニシティ、パラレルワールド等々…。
私が子供時代を過ごした昭和の時代は、そんな内容のテレビ番組も多く、もうドキドキしながらテレビの前に釘付けでしたっけ…。
それに自分自身でも、予知夢や奇跡的な偶然、九死に一生…みたいな体験をしたこともあります。
とはいえそうした体験は、気のせいとか、たまたま運がよかった…という風に「非科学的」とされるのが常でした。
けれど、こうした話は古今東西に広く存在し、語り継がれてきている…。
まったくの気のせいとか偶然で片付けられない、普遍的な「何か」があるのでは…。
私はずっと、そう思ってきました。
そのことに、科学的な裏付けにつながる仮説を提示してくれたのが、この本でした。
量子物理学の世界で論じられる仮説
光文社新書「死は存在しない」の著者・田坂氏は、東京大学工学部を卒業した工学博士です。原子力事業に携わり、大学教授や内閣官房参与などを務め、いわば最先端の科学技術に触れてきた方です。
その方が、こうした不思議な現象について、分析・研究をされているというのがまず驚きでした。
そして、この本で述べられているのは、「これまで非科学的とされた現象について、ある仮説で説明がつくのではないか」ということでした。
それが「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」です。
「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」とは…
量子物理学の理論は私にはさっぱりわからないのですが、ごくざっくりとまとめると、
・この宇宙には、無限のエネルギーを宿す「量子真空」という世界が存在する
・量子真空の中に、ゼロ・ポイント・フィールドと呼ばれる場がある
・そこには、世の中のすべての事象・情報が、波動情報として永遠に記録されている
ということらしいです。
そして、人間の意識は時に、その領域につながることがある、のだと。
いわゆる「不思議体験」と呼ばれる現象は、そうした瞬間に起きているのではないでしょうか。
ゼロ・ポイント・フィールドとつながる
ゼロ・ポイント・フィールドへは、「たまたま、偶然に、無意識に」つながる場合もあれば、人によっては修行や鍛錬を通じて、意識的にアクセスできる場合もあるのでしょう。
よく、芸術家やクリエイターが、「アイディアが降りてくる」などという表現をしますが、これも「ゼロ・ポイント・フィールド」からひらめきを受け取っているのかも…。
宗教家などが、瞑想など修行に励むのも、このゼロ・ポイント・フィールドにアクセスすることを目指していたのでは…と思えました。
人は死後どこへ行くのか
これまで、天国とか極楽、あの世と言われてきた世界の実体も、ゼロ・ポイント・フィールドだったとしたら…?
人は死後、徐々に自我(エゴ)から解き放たれ、このゼロ・ポイント・フィールドに同化し、すべてを包括した世界に還っていくのかもしれません。
どこまでも穏やかな、光にあふれた世界…この本を読みながら、よく臨死体験の経験者が語る表現を思い出しました。
心に安らぎをもたらしてくれる本
年齢を重ねると、人生の行く末について考えることが多くなります。
自分の寿命はいったいどのくらいなのだろうとか、命が尽きたら魂はどうなるのだろう…とか。
答えの出ない問いばかり、なのですが。
でも今回この本を読んで私は、癒しというか、自分の心が広がっていくような感覚を味わいました。何か大きな存在に導かれるような、そんな気持ちです。
私は特定の宗教を持ちませんが、神様に守っていただく、というのはこういう心持ちなのだろうか、と感じました。
ここ最近読んだ本の中で、とても衝撃(良い意味で)を受けた本です。
田坂広志氏の本を、もっと読んでみたいと思っています。そのときにはまたレビューしてみますね!