30年前に家を建てた知人の話
先日、30年近く前にマイホームを建てた知人と話す機会がありました。その方いわく、
「土地がね…買ったときの値段から、今はもう半額以下くらいまで下がってしまってね~」
つまり、もし1千万で買った土地なら、500万円以下になっているということ。
その方は札幌近郊にお住まいです。それでもそんなに下がるものですか?と聞いたところ、いろいろ興味深いお話を聞くことができました。
当時は大人気の分譲地だった
その住宅地は、生活利便施設とともに開発されることで注目を集めました。スーパーや学校、病院などが徒歩圏内にひと通りそろっています。
市中心部から少し離れた郊外のため、自然が豊かで、一区画あたりの敷地面積もゆとりある大きさ。
広い庭付きマイホームの夢がかなうとあって、多くの人が魅力を感じたのでしょう。不動産バブルの波もあり、土地購入は抽選になるほどの人気だったそうです。
しかしその後、他にも条件の良い分譲地が造成されたことで、やがてそのエリアの人気は下火になりました。
分譲初期(40年ほど前)に家を建てた住民は、今や70代を超えつつあります。亡くなったり引っ越したりで、今はあちこち空き家も目立つ状態に…。土地の価格も下がり続けたそうです。
かつての人気分譲地の今後は…
自治体では、その住宅地が過疎化して荒れないように、土地販売のプロモーションや、北海道外からの移住者に向けて情報発信をするなど、努力しているようです。
ただ、今後住民が増えるかどうかはわからない…とその知人は言います。
その住宅地は最寄りの駅まで遠く、公共交通機関はバスが頼りです。通勤は自家用車を使う人が多いですが、通学の高校生などはバスを使わざるを得ません。通学時間も長くなってしまいます。
「買い物なんかは、まだお店があるからいいけれど…子供さんが高校・大学に通うのは大変でしょうね…」とのことでした。
今では、駅まで徒歩圏の分譲地が他にいくつも開発されました。だからそちらに若い家族が流れるのは無理もない、と。
その方は、もう定年を迎え、お子さんもすでに成人。臨時で時折働いているくらいなので、通勤の心配も無用。広い庭で家庭菜園に精を出し、楽しく暮らしているそうです。
でもこれから先、その地域がどうなるかはやっぱり気になる、とのお話でした。
「30年前には、こんなふうにさびれるとは想像できなかったね…」というつぶやきが印象的でした。
将来のことはわからない
我が家は土地購入の前に、市役所で都市計画やハザードマップを調べました。できるだけ安全で、将来性のある街を…と考えたつもりです。でも30年後の街がどうなっているかなんて、確かに想像できないですね…。
たとえ今、JRの駅が徒歩圏だったとしても、路線がずっと存続するかはわかりません。人口の動きだって、この少子高齢化では、プラスの要素は期待できないでしょう。
ただ、ここ最近で少し様子が変わってきたこともあります。
コロナ禍で、リモート勤務も一般的になりました。これまで「ド田舎」と言われた場所でも仕事ができるようになり、地方に移住する人も出てきています。住まいに関する状況というのは、またどんどん変わっていくのでしょう。
これからは、駅までの距離や街の規模よりも、違った要素が重視されるようになるのかもしれません。