前回、回遊動線のメリットについて記事を書きました。
回遊動線、よいことばかりのようですが、うまく計画しないとデメリットもあります。
デメリット1:コストが増える
通路を増やすと、その結果、床面積が大きくなってしまいます。
床面積が増えると工事費全体に影響しますので、コストを優先する場合にはデメリットですね。
これは、ウォークインクローゼットを作る場合にも同じことが言えます。
面積という点だけ考えれば、実はウォークイン/ウォークスルーにしないほうが効率的です。通常の壁面収納なら、通路部分が要らないわけですから。
また2方向から出入りとなると、照明のスイッチも余分に必要になります。
(この場合は、センサーつきライトにするのも一案ですが)
デメリット2:ドアや通路が増えることで、壁面が減る
通路用の開口部が増えると、相対的に壁の量が減ります。
結果として、家具の置き場や収納スペースの位置が限定されてしまうことがあります。
家具だけでなく、カレンダーや鏡などインテリアアイテムも、壁が少ないと飾りにくいですね。
壁面の量は、建物の強度にも影響します。回遊動線にこだわりすぎると、必要な壁量の確保が難しく、プランが作りにくくなるかもしれません。
それに開口部が多すぎると、ドアの開閉や人の出入りのため、空間がなんとなく落ち着かなくなりがちです。
奥まった位置にある部屋や、窓のない穴蔵のような空間のほうが、落ち着いて過ごせるという経験はありませんか?
書斎や子供の遊び場として、あえてそういったDEN(デン:英語で「巣穴」「ねぐら」などの意味)と呼ばれるスペースを設ける人もいるそうです。
こもり感のある空間は、集中したいときや、一人でリラックスしたい時にも有効です。こうしたスペースは、壁があってこそ。
回遊動線ばかりを気にして、壁を減らしすぎないようご注意ください。
重要なのは流れのスムーズさ
こうしたデメリットがあることをふまえれば、回遊動線にするかどうかは、よく考えねばなりません。
プラン作りの際、漠然と「便利そうだから回遊動線に」は失敗のもとです。
回れることだけが目的なのではなく、大切なのは流れをスムーズにするということ。
通路を設けることで、行ったり来たりという無駄をかなり減らせる…それならば、回遊型にするメリットが生かせるでしょう。
「人」の動線と「モノ」の動線
動線を想像する時は、人が通るルートだけでなく、途中で必要なモノを持ち出したり戻したり…という要素も考えてみてくださいね。
自分が具体的に何か“モノ”を持って移動することを考えてみるのです。
たとえば、お風呂に入るとき、着替えやタオルをどこから出すか。
洗い終わった洗濯物は、どこでどうやって干すか。どのように運ぶか。
学校から帰った子供が、カバンをどこに置くか。…などなど。
間取りプラン作成時には、家族そろって図面上で動きを想像してみることをおすすめします。
人の動きの経路・モノの置き場所という2点に注目して、流れがスムーズであれば、必ずしも回遊動線にしなくてもOKじゃないでしょうか。
無駄なコストをかけずに済むよう、よくご検討ください。