『認知症世界の歩き方』とは
『認知症世界の歩き方』(著:筧裕介氏 ライツ社)は、新聞の書評欄で知りました。
サブタイトルは、「認知症のある人の頭の中をのぞいてみたら?」です。
認知症のある人への対応を扱う本は、これまでにもたくさん出版されていますよね。
でもこの本は、従来の本とはちょっと切り口が違う感じで、興味を引かれました。
レイアウトデザインも、すっきりとおしゃれな感じ。
内容も旅をモチーフとした物語仕立てになっていて、とても読みやすかったです。
ただ私自身は、認知症や介護そのものというより、心身の機能が加齢によってどう変化していくか、というところに興味を持って読みました。
そして、「これって老後を見すえた家づくりにも、すごく役立つ!」と思ったところがたくさんありました。
五感にやさしい生活空間とは
私は、212ページからの「旅の支度をととのえる」の章がとくに興味深かったです。
ここでは、五感にやさしい生活空間をつくることの大切さについて扱っています。
読んでみて、身体機能・認知機能の衰えによる不便さや障害は、家のつくりによって回避できることがあると気づきました。
たとえば、認知機能が衰えると、
・床や壁の素材や色の組み合わせで、段差や穴があるように感じてしまう
・複雑なパターン(幾何学模様など)のアイテムを使うと、空間がゆがんで見える
…などということが起こり得るそうです。
それがわかっていれば、複雑な模様の組み合わせを避けるなど、対処が可能ですよね。
ほかにも、トイレへの動線をわかりやすくするとか、光が強く反射するような場所をつくらないように…など、参考になることがいろいろ書かれていました。
風水にも通じる内容
風水でも、インテリアに関する教えがいろいろあります。
鏡や写真の置き場所や、方角別に適した色など…。
こうした内容は、よくおまじないや迷信の類いとされますが、実は人間の認知機能のことを考えて…という側面もあるのかもしれません。
老化…誰もがいつかはたどる道
自分が年を重ねたとき、あるいは高齢の親を呼び寄せて同居する際など、できるだけ危険のない、快適な住まいにしたい…。
きっと、誰もがそう願うはずです。
老化や認知機能の衰え…早いか遅いかの差はあれど、それは誰もがこれからたどる道。
老いたとき、自分の体と心がどんなふうに衰えて、どんなことが問題となって暮らしにくくなるのか。
それを知っておくことは、とても大切だと思います。
老後の住まいを考える方も、一読をおすすめします。
自分のために読むのはもちろんですが、めぐりめぐって、認知症を抱える人々への理解や、人にやさしい社会の実現にもつながるかもしれないですね。